今日行った家系ラーメン店の暖簾の向こうはパラレルワールドだった。
久しぶりに故郷の横浜に帰ってきた。 横浜に来ると必ず食べたいものがある。
崎陽軒のシウマイ? No, No, No
中華街の角煮まん? No, No, No
家系ラーメン? Yes! Yes! Yes!
家系ラーメンを知らない人のために端的に書くと、
油だらけ、豚骨ベース、太麺シコシコの圧倒的カロリーでゴリ押ししてくるラーメン界の巨魁!
ただでさえ胃もたれしそうな家系ラーメンに、胃弱の私は無謀にもこれでもかこれでもかとにんにくを入れるのが好きなのである。 にんにく入れ放題の店こそが正義なのである。
いつものように体育会系っぽい店員に席を案内され、注文を尋ねられる。 当然まぜそば、全増しだ。 出されたプラスチック製コップに入った水を一息グイッと飲み干し喉を潤して食べる準備万端。
ここまでは私の日常である。ここまでは新入歓迎会の自己紹介ほどどうでもよい内容なのだ。 ここからイレギュラーなインシデントが発生した。
ラーメンは自動券売機で買ってから店員に渡すシステムなのだが どうも自動券売機のところで買い方がわからないのかごちゃごちゃ文句の声が聞こえる。
5分くらいごちゃごちゃ文句言ってるから流石に私も気になってきて後ろを振り向いて自動券売機の前の一団をちらりと見た。 なんということでしょう。
スーツ姿のゴツい男2人と金のブリンブリン(ストリート系の人が首からぶら下げてるチェーンみたいなやつ)をぶら下げた的場浩司みたいな男が1人いた。 (以下的場家)
(おっとっと。。。こいつぁー目を合わせちゃいけないタイプの人種だ。目を合わせるや否やポケモントレーナーよろしく不当な喧嘩をふっかけられてひ弱な私は 戦わずして負ける戦法をとって大人しく財布の銭を一円残らず渡すのがオチだ。おとなしくしてよう)
ようやく的場家は食券を購入して、店員は彼奴等に座席を案内する。 (隣はヤダ・・・隣だけはヤダ・・・隣だけは絶対にヤダ・・・)
店員「へい、こちらのカウンターに3人でどうぞ!」
○:俺
●:的場
▪️:スーツ男
パクス・ヨコハマーナ(平和な横浜時代)
・・・○・・・
↓ ↓ ↓ ↓
ポスト・パクス・ヨコハマーナ(平和な横浜時代以後)
▪️●▪️○・・・
(はい?店員?おい、スタッフゥー!スタッフゥー!どういう意図でその配置にした?私見た目からしてひ弱そうでしょ?もはや的場さんの覇気だけで気絶しそうよ?)
この距離だと嫌でも的場家の話が聞こえてくる。
的場「とりあえずビールに限るわな!ゼハハハハ!!!」 スーツ一同「はい!」
誇張なしに的場さんの笑い声はゼハハハハだった。黒ひげ以上のゼハハハハだった。 ただ滑舌が悪すぎて喋り方が完全に長州力だった。
スーツ右「さあさあ、ビール注ぎますよ!はい!」 的場「いいんだよ、自分で注ぐからよぉ!ゼハハハハ!!!」 スーツ右「そんなこと言わずに!さあさ!」 的場「いつから俺に口ごたえするほど偉くなったんだあ?」 そう言いながら的場さんはスーツ右をピシャリと叩いた。 しかし変な空気にもならず的場ワールドは続く。
簡単に叩いたと書いたが、私に対してあのレベルのピシャリはピシャリではなくズドンである。 体躯が立派なスーツ右であったからピシャリで済んだのだろう。 私なら全治6ヶ月の裁判沙汰である。
それから的場さんはおもむろに語り出す。
的場「市長の件な、俺出るわ!」
スーツ一同「それはそれはさすがでございます」
市長ってあの地方自治体首長の市長って事かい?まさか横浜?横浜市長かい?
もしかしたら大物政治家なのかもしれないと思い、恐る恐るとタピオカのような目ん玉を左にちらっと動かして顔を見た。
知らない!
こんな政治家テレビでも新聞でも選挙ポスターでも選挙掲示板でも一回も見たことがない! 絶対大物じゃない!多分。
ここで私の懐疑は的場家ではなく自分自身に向けられることとなる。
俺、もしかしてバカが偉くなるという世界線に迷い込んでしまったか?
考えてみるとスーツ姿の男たちはイカツイけれどもどこかインテリジェンスを感じさせる風貌がある。 それに引き換え的場はどうだ?ただのヤカラじゃねーか!とんでもねえ、ありゃ前科n犯はあるぜ。
今も私はバカが偉くなるというパラレルワールドでこの記事を書いているのかもしれない。
あなたは自分の住んでいる世界が今までの世界と同じ世界であると言い切れるだろうか?